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参った。やってしまったのだ。以前、モツ橋本氏がやった時には、さんざんバカにしたにもかかわらず、私もやってしまったのである。
何をやってしまったか……。恥ずかしくも告白すれば、ケータイをトイレに落としてしまったのだ。
場所は新宿のビックカメラ。妻と知人を待たせていたため、慌てて立ち上がったのが、よくなかった。
立ったとたんに、便座にストラップがひっかかり、見事にドボン!
ストラップ先についたマスコットの犬は、かろうじて便座につかまっていて転落を免れた。しかし、本体と彼をつなぐハーネスの長さは、便座から水面(?)までよりも、はるかに長かった。本体は汚物さまよう水中(!)に、「く」の字に曲げたカラダの半分を沈めていたのである。
便座にしがみついていたマスコットの犬は、グラグラと揺れていて、今にも落ちそうだ。素早くつまみあげ、本体を引き上げた。幸い犬まで溺れる事態にはならなかったものの、やはり本体はビショビショだ。
水滴のしたたるケータイを右手に持ったまま、左手だけで下着とズボンを上げる。これが、なかなかに難しかった。
あまりジタバタしすぎると、ケータイに付いた水滴が自分にかかってしまう……。もしくはケータイそのものが、カラダに触れる……。
ベルトを締めながら洗面台に走り、蛇口から流れる水で、とにもかくにも洗った。犬のストラップも外した。そして、ペーパータオルで水気を取る。
ボタンに触れる度に、その周囲から水が漏れた。ケータイは泣いていた。
鏡に映る私の顔も泣きそうだった。
やがて一瞬、画面が七色に光り、すぐに真っ暗になってしまった。どうやら意識を失ったらしい。
そのままケータイ売り場に持って行き、修理を申し出るも、「ここではできま
せん」と断られる。ひょっとしたら、もうダメかもしれない……。あきらめた。
2日後、ケータイを預けた吉祥寺のサービスセンターから連絡があり、やはりメモリーは消えてしまったという。記憶を失ったケータイ……。代替に貸してくれた電話は、当然番号こそ同じだが、まったく別物だった。
ふと小説の『今、会いに行きます』を思い出した。ただ違うのは、ケータイに再びあえるのは、「今」ではなく、2週間後だということである。
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